「今があればそれでいいんじゃないの」
そう
確かに今が充実していれば
それまでの過程は大して重要ではないのかもしれない
だけど
これまでの歩みを知っていれば
尚一層
その人のことを大切にしようという思いに辿りつくはず
全てをシェアする必要はないけれど
生きてきた証は
自分にとって誇り
今日は母の命日
もう丸9年になる
60代で逝ってしまった母
オムツを交換しようと横にした瞬間に息が止まった
自分でも全くの無意識で
手が勝手に心臓マッサージをしようと胸元に伸びたのをよく覚えている
寝たきりになって4年間
私は未だに母に無駄な延命をしてしまったのではないかと
ずっと後悔をしている
それから
答えのない答えを探すように
死生学を学び直し
その答えは永遠に見つからないものと気づく
皆
誰しも
ドラマのように
一人一人に生きてきたストーリーがあって
誰かと比べる必要はないけれど
自分は他の人より少し苦労が多かった分
そこに共感し
その道のりを頑張ったねと讃えあってくれる
そんな友がいる
長く一緒にいると
少しずつすれ違うこともある
当たり前のように
お互いを理解して
あなたのことは自分が一番理解していると
そう思い込んでいることもある
そう思っていても
それぞれ生まれてから出会うまでの生きてきた過程には
あなたの知らない私もいて
苦しい時間もあって
今
楽しそうに笑っている私は
時に
空を見上げて
もうこの世にいる必要なんてないと思ったこともあった
今
見上げる空は
これまで出会ったすべての人たちの上に存在し
ずっと何億年もの間
変わらずそこに存在する
私の51年の人生は
地球時間で言うと0.1秒にも満たないかもしれない
母の67年の人生には
その先にもっと自分らしく生きたいと思った希望があったかもしれない
ずっと誰かに愛されることばかりを求めていた母
今
その時の母の年齢になって
娘であった私には理解できなかった気持ちが
少しだけ理解できるようになったような気がする
シングルマザーで
働き者だった母
高卒で一生懸命資格を取り
いくつも仕事を掛け持ちし
家でも副業をこなし
ずっと肩こりに悩まされていた
狭い団地の居間に
寝る時はこたつテーブルを隅に立てかけて
布団を二つ敷いて一緒に寝起きしていた
できるだけ
私も仕事が早く終わった日には夕食を作り
母が副業をしているこたつテーブルで食事をし
休日また母はそこで仕事を始める
そのこたつテーブルは
15年以上経った今も
私と一緒に生活している
思い出したくない過去も
懐かしい過去も
ずっと一緒にあるからこそ
私は今も一人で暮らしていけるんだと思う
ちなみに
私はお墓にあまり仏花を置かない
できるだけ可愛らしい花を添えて
必ず写真を撮って帰る
母が喜ぶことをしてあげたい
お母さん
ありがとう
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